愛 理~airi~
ひとりで乗っていた時は、シンとした空間にBGMが流れるだけの車内だったけど。
「ねえねえ、大和くん。
亜実がすいぞくかん案内してあげるからね!」
「うん、よろしくね」
チャイルドシートに乗った亜実ちゃんが、大きな声で話し掛けて来ると。
「えー、真咲ちゃんは!?」
「あっ、わすれてたー」
「亜実ぃー」
妹が返した何気ない一言で、意外にも大きなショックを受けたらしい真咲。
「…真咲、分かりやすい」
「だって…悔しいんだもん」
“鉄の女”の面目ゼロというか、ガックリと項垂れる彼女に笑ってしまう。
「それなら…、俺の勝ち?」
「ち、違うわよ!ねえ亜実!?」
どんな勝負事にも負けたくないのは、ひとつの職業病であると思うけど。
「んーと…、わかんない」
「えー」
「ハハッ――」
目下の大きな案件がひとまず片付いた事で、ようやく都合をつけられた日曜日。
ゆっくり、ゆったり流れる時間に身を委ねられると、心までホッと和んでいく…。