愛 理~airi~
与えられる報酬以上の成果を掲げてする仕事だと、ひたすら時間に追われるから。
ソレを忘れさせてくれる笑顔にパワーを貰っているのは、寧ろ俺の方だな・・・
「わあー、もうすぐ!?」
「うん、ちょっと歩くかな」
そうして水族館の専用駐車場に到着すると、さらに亜実ちゃんは大喜びする。
車を停めて亜実ちゃんを下ろせば、小さな身体で今にもテクテク駆け出しそうだ。
すると慌てて彼女の腕を取った真咲が、血相を変えて亜実ちゃんの両腕を掴む。
「亜実!危ないからダメでしょ!?」
「ご、ごめんなさぁい…」
家では滅多に怒らない真咲の真剣な表情のせいか、亜実ちゃんはシュンと項垂れる。
「っ、もう…お願いだから、車には気をつけて――」
それはお母さんを交通事故で亡くした事が、ここまで必死になる理由だろう。
事故はあまりに突然に、その人と家族の時間をピタリと止めてしまうそうだから…。
「うん…真咲ちゃん、ごめんね?」
「ううん…、怒ってごめんね…」
大切な妹をギュッと抱きしめる彼女の背中が、俺には泣いているように見えた…。