愛 理~airi~
#弐 理 由
結婚後はじめて迎えた休日、持ち帰っていた仕事を書斎でこなしながらも。
時折リビングを覗きに向かえば、キャーキャーと楽しそうな声で満ちていた…。
「亜実ー、ゆっくり混ぜてね」
「うん、分かったぁ」
「そうそう!亜実は上手だねぇ」
「えへへー」
エプロン姿の真咲と亜実ちゃんが、ティータイム用のお菓子を作っていて。
根っからのシスコンと豪語する、真咲の表情は緩みっぱなしという具合だ。
「んー…、っしょ」
ボウルの中の生地を一生懸命に混ぜる亜実ちゃんは、確かに文句なく可愛いし。
すっかりその一員に加わっている俺は、光景をクスクス笑いながら近づいた。
「亜実ちゃん、なに作ってるの?」
ダイニングテーブルで奮闘する亜実ちゃんに合わせ、屈んで尋ねてみれば。
「えーとね…、ぶ、ぶら…」
「ふふっ、ブラウニーよ」
お菓子の名前を覚えられなかったのか、隣で見守っていた真咲に視線を送り。
彼女もまたクスクスと笑いながら、可愛い妹へ優しい眼差しを向けていた。