愛 理~airi~
そしてもうひとつ…、背負うモノが大きいほど人は成長出来ると思うんだ。
「大和くん、亜実イルカさんみたい!」
「りょーかい」
腕一本で支えている小さな子と、片手を繋いで歩いている奥さんだけで。
「ねえ…亜実が大変だし、手放して?」
真咲と結ばれるまでに苦悩した自分を、今となっては嘲笑してやりたいし。
「ダメ。真咲も心配だから」
結婚してからの俺は、彼女たちに対して少し欲張りになった気もするけど。
「アラサーが迷子になる訳ないでしょ?」
いつでもクスクス笑って誤魔化すクセは、まだまだ直りそうにない真咲だから。
「デートだから良いの。
それとも、真咲は俺と手繋ぐのイヤ?」
「そ…、そうじゃなくて…」
「なら、離さないから覚悟して」
「…っ」
自分の胸の内にある想いを言葉にする事が、どれほど大切か思い知らされた。
彼女が上手く伝えられない性格な分だけ、俺が手を広げて受け止めてやれば良い。
無言のままに、キュッと手に力を入れ返す小さなサインをくれるから…――
「あー、泉ちゃんだ!」
「…えっ!?」
突然に叫んで前方を指差す亜実ちゃんに、俺たちの意識はソチラへ向いたけどね…?
【#十 休 息★終】