愛 理~airi~


そう内心で思う度に、ふと真咲の手握る力をギュッと強めている自分がいる。



先ほどの思いを口にすれば、彼女は“私は強いから大丈夫!”と言い張るだろうし。



言葉では癒えない部分こそ、俺や亜実ちゃんの存在に安心して欲しいと思うんだ。



真咲の隣のヤツはオマエを好きでしょうがないから諦めろよ、とね…。



「…理解出来ないから“恋愛マスター”なのかな?」


「だろうね…」


確かに彼女と同様に、真咲と違って小林さんの行動は大胆だとよく感じるけど。



そう言えば、あれから日野と小林さんに進展はあったのかと今ごろ思い出す俺。



「大和、どうしたの?」


「んー、両手に花だなって…」


「もー、また言う…!」


俺が笑って答えれば、案の定真咲の方は気恥ずかしそうに返してくれて。



「ねーねー、大和くん!“りょうてにはな”ってなぁに?」


「んー、幸せっていうことだよ」


「それなら亜実も“りょうてにはな”だね」


亜実ちゃんが納得したように言うから、俺たちは顔を見合わせて微笑んだ。



子供らしい純真さが、どれほど心の豊かさを齎してくれるか計り知れないな…。



< 53 / 122 >

この作品をシェア

pagetop