愛 理~airi~
コソコソと事訳を話しているらしい彼女たちを一瞥して、俺は前方へと歩み寄った。
その気配に気づいた彼は、亜実ちゃんの為に屈んでいた体勢から立ち上がってくれる。
「…この前は、来てくれてありがとう」
「いえ…こちらこそ、ご招待して下さってありがとうございました」
こうして俺が宇津木くんと話すのは、真咲を誘ったアノ展示会で紹介されて以来。
結婚式の時には話す時間が無かったし、オマケに彼は仕事で二次会をキャンセルで。
たまに真咲から彼の話が出ると、ガキっぽい嫉妬心が生まれる理由はそのせいだ…。
「…仕事はどう?」
何となく結婚式の話題を避けてしまうのは、彼に悪いという勝手なエゴだろうか…。
「あー…、相変わらず失敗ばかりですね。
真咲さん…、あ、すいません」
「いや…、気にしないで良いよ」
それでも別の男から“真咲”の名で呼ばれるのは、やはり嬉しいとは言い難いし。
30をゆうに過ぎた俺にも、独占欲なんて感情があるのだからもう笑うしかない。
「川崎さん、その何て言うか…。
俺の方はもう吹っ切れてるんで、心配しないで下さい」
すると宇津木くんが少しバツが悪そうに、でもハッキリと言い切ってしまう。