愛 理~airi~
じつに晴れやかな彼の表情は、俺の本音をアッサリと読んだと言わんばかりで。
「え、いや…、顔に出てたか?」
バレていてもアッサリ認められないのは、大人のずるさ故なのかもしれない。
「はい。仕事中の真咲さん以上に怖い顔でしたよ。
あんな幸せそうな顔で仕事されると、もう奪う気も恋心も消滅しますって。
社内では“鉄の女”で通ってますし、誰もアプローチかけませんから安心して下さい。
ねー、亜実ちゃん?」
「ねぇー?」
そんな俺に、してやったり顔で亜実ちゃんと笑い合う宇津木くんにはもう負けだ。
にわかに心配していたコトは、彼のこの顔を見ればもう無いと確信出来てしまう…。
「ところで、小林さん…」
「ちょっと。誰が“鉄の女”ですって?」
そう納得して本題を尋ねようとすれば、背後からどこか冷たさを感じる声が響いた。
「いやー…あ!今日って天気良いですよね?」
「ええ、そうね。“鉄の女”としては、明日のミーティングが楽しみだけど」
「えっ…」
「ふふっ、う・そ・よ!」
「真咲さん…」
俺の隣へ戻って来た真咲は、ニッコリ笑いながら宇津木くんを仕留めてしまう。