愛 理~airi~
不意に腕を掴まれた彼女は、驚いた表情をしてコチラを見上げているが。
「今日は休んだ方が良い」
「ええ!?大丈夫…」
ココでも負けず嫌いな性質からか、フルフル頭を振って拒否の姿勢を示した。
「じゃないだろ?顔色悪いし、食欲無い時点で」
「…あるもん」
「――にしては、熱っぽいよね?」
「・・・・・」
珍しく俺が折れない事にムッとしたようだが、視線を逸らすと押し黙ってしまう。
捕らえていた細い腕をそっと離すと、今度は身体ごとギュッと抱きしめていた。
「同じ立場の人間としては…。
会社で迷惑を掛ける前に、病院行って一日休んだ方が良いと思う。
――とか言って、本当は心配なだけ。…頼むから休んで欲しい」
思えばここ数日、時おり疲れた表情がチラチラと垣間見えていたのに。
ソレを気づかないままに、今日まで我慢させてしまった俺の方が悪い。
「…や、まと…あ、あのね」
「ん?」
すると根負けしたのか、俺のシャツをキュッと掴んで口ごもり始めた真咲。
「え、と…、体調が悪いんじゃなくて…」
どこか歯切れの悪い話し方から、まさか思いもよらない事態へ向かうとは…。
【#十三 道 筋★終】