愛 理~airi~
#十五 出 張
夢や願いを実現する為には、一方で切り捨てなければならないモノが出て来る。
どちらを選ぶかなんて考えず、今までの俺ならおもむろに突っ走って来たけど・・・
「…真咲――」
「大丈夫よ、検査したら連絡入れるから」
「そうなんだけど…」
「あ、待って。ネクタイが…」
玄関先で革靴に足を沈め、これからアメリカ出張の俺を見送ってくれる奥さん。
「これでOK」
「サンキュ」
彼女がチョイスしてくれた、ポールスミスのネクタイのズレを正すとフッと笑った。
出張が決まった日の帰宅後、俺が行く前に検査してみない?と持ち掛けたけど。
“正確か分からないもの”と、フルフル頭を振ってチェックを拒まれたのだ。
「それじゃあ行って来ます。
忙しいと思うけど、頼むからムリするなよ?」
「ふふ、それは大和でしょう?」
「…よく言うよ」
「っ、ん…――」
クスクス笑う彼女をそっと引き寄せると、そのまま唇を性急に奪ってしまう。