愛 理~airi~
後頭部を支えて啄ばむようにキスを落とし、そのまま舌をスッと差し入れると。
すっかりタイミングを分かりあっているかのように、ソレに答えて少し開く口。
「っ…、ふぅ・・・」
くぐもった声を上げた彼女の歯列をなぞりつつ、熱い舌を絡み合わせたい所だが。
うごめきかけた舌先をスッと抜き、ラストに唇へチュッとリップ音を立てて終えた…。
「物足りないけど、続きは帰って来てから」
「もう…、」
後頭部を支えていた手を、今度は頬にそっと置き換えてニッコリ笑って言えば。
銀糸で濡れた唇と若干顔を赤らめる真咲に、ことさら欲望だけが増していくようだ。
結果が出るまでは“お預け状態”だからか、余計にドキリとしてならないな…。
「ハハ、“今度こそ”行って来ます」
そんな感情をスッと遮るように、今度こそキャリーとビジネスバッグを手にする。
急きょ決まった出張で仕事を前倒しにした分、昨日はとうに日付が変わっての帰宅で。
出張当日の今日も早朝とあって、亜実ちゃんを起こさないで出発するのが残念だ…。
「うん、気をつけて行ってらっしゃい」
互いに“頑張り合っている”日々に、“頑張って”のフレーズは決して口にしない。
愛しさの増す笑顔で手をヒラヒラ振った彼女に、背を向けてマンションから出発した。