愛 理~airi~


懐妊の兆候が分かる一週間――を譲らない真咲に、やっぱり心配と不安が付きまとうが。



何度もチェックする事への不安を、彼女自身が避けているのかもしれないから。



俺もお袋には妊娠の可能性を告げず、“真咲が体調を崩し気味”とだけ告げておいた。



責任ある立場のうえに周りのプレッシャーを感じれば、彼女が疲れるだろうから…。




「ヤマト!」


一日を移動に費やした翌日、朝から営業部のセミナーに参加する為に本社へ行けば。



「おっ、と…!メアリー…、相変わらずだな」


「だって嬉しいもの!」


後方から名前を呼ばれたと思った瞬間、ドンと体当たりのように抱きつかれてしまう。



こう人目もはばからず、ギュッとしがみつかれる状況も気にならないのがアメリカだ。



「…離れてくれ」


それが挨拶の意を込めてのハグなら、もちろん構わないのだが彼女だけは違う。



「イヤよ。ヤマトがコッチに来たのって、2ヶ月以上も前じゃない。

それに会議だけ出て、サッサと日本に戻っちゃうし」


日系人のメアリーは、俺ともにGEL日本支社で働いていたメンバーだからだ。



「ああ、結婚準備もあって忙しかったしね」


グッと力を込めて離そうとしないメアリーに対して、その理由を単刀直入に告げた。



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