愛 理~airi~
営業部全体で行われるセミナーが開始しても、結局メアリーは会場に現れなかった。
このセミナーで行うディベートが、俺と一緒のチームだった事が理由だろう。
きっと話しかけて来る事も無くなるだろうし、悪いが俺もソレが一番だと思える。
誰も傷つかない事があり得ない――ソレが恋愛だと、真咲に出会って知った今は。
大切な人たちを傷つける恐れがあるモノには、キッパリNOを告げなければと思うんだ。
彼女たちを守ると決めた俺が、何よりも傷つける存在になってはならないから・・・
「大丈夫かな…」
一日目のセミナーを終えた俺は、営業部の人間と話をして足早にホテルへ戻った。
メアリーを傷つけて直ぐのクセに、今すぐに真咲の笑顔に会いたくて堪らない。
それでも仕事がある以上、やはり責任が伴う立場でワガママなど許されないから。
部屋に入ってすぐ携帯電話を取り出すと、そのまま愛しい人の番号にTELを掛けた。
日本との時差が14時間の地とあって、いま向こうは早朝で迷惑かもしれないが…。
「あ、もしもし…?」
「大和…!いま電話しようと思ってたのよ!」
ワンコールで電話に出てくれた、何より大切な真咲の声はすこぶる弾んでいた…。
【#十五 出 張★終】