愛 理~airi~
#十六 生 命
昔から欲しいと思う物は、一人っ子だった事もあって、割と願いを叶えて貰えていた。
成長するにつれて他へと視線が向くようになり、いつしか失っていた物を欲するコト。
ソレを蘇らせてくれたのは、決してお金では手に入れる事の出来ない無償の愛だ――
「…本当に?」
「うん!今日ね、病院にも行って来たの」
アメリカと日本という離れた地で、電話で報告を受ける事になってしまい残念だけど。
明るい声色で話す真咲の言葉に、まったく曇りがちなトコロは見受けられない。
「ホント、だよな?」
「ホントよ。6週目に入ったところらしいわ」
だけど何度も聞き返してしまうのは、嬉しさから来る動揺なのかもしれないが。
「やった…!」
「うん…、っ」
心の底から“やった!”と言えた事は、今までに何度…いや初めての経験だろう。
大切な人が身籠るという、これほどまでに喜ばしい出来事は無いと思わされた。