愛 理~airi~
グス、グス…と涙を我慢しているらしい声色に、俺もグッと込み上げるモノがあって。
「ありがとう…」
「大和…、あたし、こそ…」
真咲と出会って、どれほど“幸せ”というフレーズを実感させて貰えただろうか。
いま嬉しさと隣り合わせの不安を抱えているであろう、彼女をギュッと抱き締めたい。
それが出来ない事にもどかしさを覚えながら、真咲に“ありがとう”を伝えると。
とにかく帰るまで絶対に無理をしないで欲しい、と念押しをしてその電話を切った…。
大切な人の妊娠をどれほど望んでいても、恵まれなかった先輩や同僚がいたりする。
体外受精に懸ける大変な話を聞かされた時は、まだまだ俺には縁遠い話だったけど。
その願いを打ち砕くように、辛い治療からケンカの末に別れた友人夫婦もいるのだ。
望めば子供は出来るものだと思っていた俺には、驚きの出来事でもあったと同時に。
子供を授かるコトがどれほど大変でいて、どれほど尊い出来事なのだろう――
大切な真咲が身籠ったという事実が、その思いを強く実感させてくれたのだった…。