愛 理~airi~


幸いにも授かれた命に深く感謝していれば、早く日本へ帰りたい気持ちが増す。



この喜びを分かち合うには、この距離や電話越しの真咲の声では堪らない…。




「何か良いコトでもあったのか?」


「なんで?」


翌日も変わらずセミナーの行われる大会議場で、メンバーのリュークに尋ねられた。



「顔がニヤけてる」


「ハハ…、そうかも」


「なんだソレ」


吹き出すようにして豪快に笑ったリュークには、まだその理由を伝えられないけど。



普通でいようと思うほど感情が表に出ているのは、嬉しい理由からどうしようもない。




「この試算からどう導き出す?」


「俺としては…」


マネジメントなど有名どころの講師を迎えての研修に、繰り返されるディベート。



激しい討論を交わしながらの時間は有意義で、研修へ来てよかったと改めて思うが。



このタイミングでなければ、なおのこと良かったと思うのは俺の勝手なワガママだ。




あと一日…、今日を終えれば、ようやく明日の朝には帰国の途に就けると考える度。



真咲と亜実ちゃんの顔がよぎって、心だけが既に日本へと目指しているようだった…。



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