愛 理~airi~
#十八 自 覚
天真爛漫で子供が呆れるくらい不器用な母と、笑顔の眩しい可愛すぎる妹。
2人とともに楽しく生きる事が当たり前…、そう思っていたのはアノ日まで。
お散歩も兼ねて買い物に出かけた母が事故に遭って、何気ない日常は崩れ去った――
どこか悟りを入れていた人生は、母の死をキッカケに更に虚しさが募って。
今後もずっと独りで生き抜いて行ける…、亜実が笑ってくれれば大丈夫だと。
そう思って風当たりの強い業界に飛び込んで、がむしゃらに突っ走って来た。
仕事が嫌いとか嫌だとか思おうが、亜実を守る為には無心になるしかなくて。
学歴には引かれ、女だからという理由で生意気のレッテルを貼られてからは。
少なからず持っていた女心も捨て去り、仕事一筋で生きると固く心に誓って。
積極的にセールスに出向き、配属された部署の立て直しだけに奔走していた。
いつしか“鉄の女”というアダ名までつき、自分でも冷酷だと自嘲した日々。
若輩者の奮闘を汲んで下さった会社に対して、凄くありがたく思いながらも。
亜実を送り迎えしては電車に揺られる中で、何が楽しいのか見失いそうだった。