愛 理~airi~
仮にも職場では役職者の立場で、もう泣きじゃくるだけの子供では無いというのに。
お義母さんに優しい大和を重ねて見てしまうと、余計にツラさが増すなんて…。
「大丈夫よ――貴方たちを置いていくほど、あの子は弱くない…」
そう言ったお義母さんは、私たちを覆うようにして優しく抱きしめてくれたけど。
小刻みに震えるお義母さんもまた、どれだけの不安と恐怖に苛まれているだろう。
用意をして早く大和の元へ向かいたいけど、飛行機の手配が済むまでに時間がかかる。
会社任せの状態で何も出来ない自分に腹を立てるしかなく、淡々と時が過ぎていた…。
お義母さんがホットココアを作ってくれて、マグカップが二つ机上で湯気を立てる。
亜実まで知ってしまった大和が負傷した事実に、室内には重い空気が立ち込めていた。
ゆらゆら揺れる蒸気をボーっと眺めていても、ただ想うのは大和の笑う顔ばかりで。
泣いても意味無いのに目が潤んでしまう自分が、ひどく不甲斐なく思えてならない…。
“手術室に入っているので、彼の状況はまだ分かりません。
でも大丈夫だと、医師が言っているので信じましょう”
大和に付添ってくれている日本人の上司が、そう優しく励ましてくれたけれど。
早く彼の元へ飛んで行きたくても出来ない状況に、手の震えが止まらなくなっていた。