愛 理~airi~
どうしよう…――そればかり思案して、何か大切なモノを見失っていた気がしたの。
「さ、さぁ…、朝ごはん食べなきゃダメね?
これから大変だもの。腹ごしらえしなきゃ…!」
するとムリヤリ笑顔を浮かべたお義母さんが、パンと両手を打ちキッチンへ向かった。
「あ…、私も」
「そうね、一緒に作りましょう」
朝食作りの途中だったキッチンへ行くと、手を洗う気丈なお義母さんに続いた私。
再びシンと静まり返るリビングでは、テレビからの音声しか聞こえて来ないし。
私とお義母さんも同じように、会話なんて出来る心境でなくて無言の時が流れた。
いつもならば、キッチンから大和と亜実の楽しそうな笑い声が聞こえるのに…。
やはり主婦歴の長いお義母さまは、冷蔵庫を見てパパっと調理に取り掛かってくれて。
見事な和メインの朝食が完成したのを見計らい、炊飯器からご飯を盛ろうとした時。
「う…っ、すみませ…」
「真咲ちゃん!?」
真っ白な炊き立てご飯の匂いを嗅いだ瞬間、私はお手洗いへと駆け込んでしまった。
「っ、うぅ…、けほ…っ」
これほどの気持ち悪さが襲ったのは初めてで、コレが悪阻(つわり)だと思わされて。
一気にグッタリ力が抜けていくのと同時に、自分一人の身体でない事を実感した…。