愛 理~airi~


どうしよう…――そればかり思案して、何か大切なモノを見失っていた気がしたの。



「さ、さぁ…、朝ごはん食べなきゃダメね?
これから大変だもの。腹ごしらえしなきゃ…!」


するとムリヤリ笑顔を浮かべたお義母さんが、パンと両手を打ちキッチンへ向かった。



「あ…、私も」


「そうね、一緒に作りましょう」


朝食作りの途中だったキッチンへ行くと、手を洗う気丈なお義母さんに続いた私。



再びシンと静まり返るリビングでは、テレビからの音声しか聞こえて来ないし。



私とお義母さんも同じように、会話なんて出来る心境でなくて無言の時が流れた。




いつもならば、キッチンから大和と亜実の楽しそうな笑い声が聞こえるのに…。



やはり主婦歴の長いお義母さまは、冷蔵庫を見てパパっと調理に取り掛かってくれて。



見事な和メインの朝食が完成したのを見計らい、炊飯器からご飯を盛ろうとした時。



「う…っ、すみませ…」


「真咲ちゃん!?」


真っ白な炊き立てご飯の匂いを嗅いだ瞬間、私はお手洗いへと駆け込んでしまった。



「っ、うぅ…、けほ…っ」


これほどの気持ち悪さが襲ったのは初めてで、コレが悪阻(つわり)だと思わされて。



一気にグッタリ力が抜けていくのと同時に、自分一人の身体でない事を実感した…。



< 91 / 122 >

この作品をシェア

pagetop