愛 理~airi~
まだペッタンコなお腹に手をそっと当てると、苦しい中で思うのは大和の事ばかり。
ただただ大和を想う自分の事で精一杯で、赤ちゃんを苦しませていたのかもしれない。
「ごめん、ね…赤ちゃん…っ」
狭いお手洗いの個室の中でへたり込みながら、ポタポタ落ちる涙が情けなく思えた。
でもね…やっぱり私は貴方のパパの状態が心配だから、強くなれなくてゴメンね――
こみ上げる気持ち悪さとムカムカ感が少し治まり、少しホッとしてドアを開ければ。
「真咲ちゃん…」
「お、お義母さん…、」
「顔色が悪いわ…、大丈夫?」
「はい、すみません」
ドアの前で待っていたお義母さんに微笑しても、人生の先輩にはバレているようだ。
「あのね…――実は大和が出発前に、真咲ちゃんが体調悪いって教えてくれていたの…。
でも本当は、妊娠していたのね」
そう私の異変を指摘する彼女には、怒っている素振りなどまったくないようだけど。
出発前に嫁の不調まで伝えて行った彼は、本当にどこまで優しい人なのだろう…?
「っ、は…い――分かったのは昨日です…。
そ…れで、大和に電話で、伝えたら…喜んで…っ」
そんな温かい彼を想うだけで、名前を呼ぶだけで…、もう涙が止まらなくなる。
「うん、おめでとう――」
「うぅ・・・っ」
うっすら瞳に涙を浮かべるお義母さんに抱きしめられ、ただ彼に会いたくて堪らない…。
【#十八 自 覚★終】