愛 理~airi~
#二十 再 会
人は窮地に立たされた時、大切なモノの光景がフッと脳裏をよぎると聞いた事がある。
俺にはソレがあるからこそ、その分かりたくもない経験をした自分を悔やむばかりだ。
何が浮かんだのかなんて尋ねられる事が、もはや愚問であるから・・・
どちらに行けばいいのか分からないくらい、気の遠くなるような場所に居た俺。
真っ暗な闇の中であてもなく彷徨っていれば、ふと遠くの方から叫ぶ声が届いて。
行き先の分からない恐怖が押し寄せる今、ソレを目指してひたすらに走っていた…。
「う…、ん…?」
ただただ光を求めて辿り着いたのは、ぼんやりとした視界に映る真っ白な世界。
そして白衣に身を包んだ人が肩を叩くから、意識が徐々に引き戻されるようだ。
重すぎる瞼をこじ開けながら、段々と自分の置かれている状況が分かって来た。
ああ、そうか…俺はあのトキ刺されて――…
「か、川崎…、目覚めたか!」
「え…、あ、あ。…ッ」
瞳さえ言う事が利かない中、シャツ姿で俺を覗き込む見慣れた男の声が響き。
頷きながら声を上げようとすれば、ズキッと疼痛が走って顔をしかめてしまう。