アヤカ先輩とひとつ屋根の下
1章*アヤカ先輩とある朝の俺
「ー…くん、いっくん……」
『……う…ん?』
かすかに聞こえる、俺を呼ぶ声。
「いっくん、」
『……何?』
「起きて」
『……朝?』
俺は右手で瞼を左から右へと擦る。
右手を右の瞼に乗せたまま、そっと左目を開けると、部屋のライトもさることながら、眩しい笑顔を俺に向けるアヤカ先輩。
「おはよ。目、覚めた?」
俺はあえてこのかわいらしい声に返事をしてやらない。
「いっくん?」
相変わらず右手は右の瞼の上に乗せたまま、横目でアヤカ先輩を見ると、アヤカ先輩は少し不安そうな表情で俺の名前を呼んだ。
『…ん』
目は閉じたまま、おもむろに唇を突き出す。