【企画・短編】瞬きさえも
「…ど、どうしましょう」
取り残されてしまい
不安げに樋野を見上げると、
ちょうど信号が変わったのか
人の波が動き出す。
「ここまで来たし、
とりあえず行く?」
流れに任せて樋野が
歩き始めたので瑠璃も
後を追いかけた。
いつの間にか増えた群集に
埋もれそうになる瑠璃の手に
温かいものが触れた。
「きゃぁ!」
「わぁ!」
握られた手を驚いて
引っ込めると、
樋野も慌てて手を引いた。