【企画・短編】瞬きさえも


男たちを睨むようにして
立っていた樋野は、
瑠璃の腕を引いて歩き出す。

痛いくらいに強い力で
掴まれた腕に薄い浴衣越しに
樋野の体温が伝わってきた。


雑踏を縫って進み、少し
開いた空間で立ち止まる。

「何やってるんだよ…って、
なんで泣いてンの?」

振り返った樋野は瑠璃の様子に
目を見張った。





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