【企画・短編】瞬きさえも
通りから外れた路地に
引き込まれたようで、薄闇を
纏い始めた辺りからさらに
今いる場所は暗くなっていた。
片方の口端を挙げて笑う
玲の顔が近づいてくる気配を
感じて、棗は顔を背けた。
チュッと音を立てて玲の唇が
露になった耳に触れる。
普段は下ろしている髪に
隠れた耳に触られて、
体が小さく跳ねた。
「……ッ…」
耳の縁を滑り降りていく
熱い唇は首筋へ
落ちていくのかと思えば
予想に反して離れていく。
閉じていた瞳を開けると、
悪戯な表情を浮かべた紅茶色の
瞳と視線がぶつかった。