【企画・短編】瞬きさえも
口ぐちに返ってくる言葉に
苦笑いしながらも、
瑠璃はとりあえず
棗に近寄った。
「西園寺さん、そんなこと
言わずに協力してください」
少し声を潜めた瑠璃が、
縋るように大きな瞳を
向けてくる。
恋愛というより他人に
無関心の樋野に片思い中の
瑠璃は、本人的に
頑張っているみたいだったが、
はたから見れば会話があまり
成立していなかった。
「…嫌」
「西園寺さ~ん」
潤んだ子犬のような
目をされると言葉に詰まる。