【企画・短編】瞬きさえも
「何?期待した?」
「……しないわよ。
こんなところで、やめて」
嬉しそうに笑う玲に腹が立って、
図星な自分に溜め息が出る。
「もぅ帰りましょ。
人混みは嫌いだわ」
両腕から逃れるように
体を捩ったのに、
玲の腕はびくともしない。
「いいよ、じゃ人のいない
トコロに行く?」
「え?…きゃっ」
覚えのある浮遊感に
咄嗟に玲にしがみついた。
闇に飲まれるようにして
2人の姿は
路地裏から消えていった。