【企画・短編】瞬きさえも
目を開けると、辺りは
木々が茂る山の中だった。
「なに、ここ…」
鬱蒼とした森林が、
闇が濃くなった空をさらに
深く濃い色にしている。
黒い木の影の隙間に
赤や紫に染まった空が見えた。
「俺の部屋かと思った?」
気持ちを言い当てられて、
まだ自分を抱きしめたままの
玲を見上げて睨む。
笑みを浮かべた顔が
近付くにつれて、玲の輪郭が
暗い中でもはっきり
見えるようになってきた。
ぼんやりと見つめていた棗は
慌ててそれを手で防ぐ。