【企画・短編】瞬きさえも
当日の昼すぎ。
準備に西園寺邸を訪れた瑠璃は
お屋敷の広さもさることながら、
豪華な調度品に、
使用人がいることなど
自分と懸け離れた世界に
かなり挙動不審になっていた。
「いいんでしょうか、
わたしまで準備していただいて」
「いいから、黙って
じっとしてなさい」
スタイリストに髪を
セットさせながら、
後ろでオロオロした様子で
着付けされている瑠璃を
棗は鏡越しに睨んだ。
浴衣がないというので瑠璃には
紺地に小柄の桜模様のものを、
黒地に牡丹を描いたものを
自分用に用意させた。