【企画・短編】瞬きさえも


河川敷で行われる花火大会に
向かう人の波に、
棗は無意識に溜息を吐いた。


目の前の景色と同じように
自然と頭の中に入ってくる人の
感情の色は気分を悪くさせる。

「気分悪い?」

「…まだ平気」

そう答えながら
大通りの交差点に出た時に
棗は足を止めた。


横断歩道の向こう側は
人でごった返していた。



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