短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
次の日、あたしは生物室の前にいた。
自分でもさっぱり分からない。
昨日、あんなに言われたあいつの所へ、また行こうとしてるなんて。
どうしよう…、入る?入らない?やっぱ…
「なんか用ですか?」
後ろから声をかけられ、振り返ると。
「ゆ、幸正!」
そこには、また白衣を着た幸正がいた。
「幸正って…、お前後輩だろ。せめて名字にしてくれ。」
「あ、じゃあ…、野々村先輩。」
「お前、名前なんだっけ。」
「あ、水沢マ…」
「水沢ね、了解。」
あたしが最後まで言わないうちに、幸正はそう言うと生物室に入っていった。
な、なんなのもう!
先輩面なんかしてさ。
「おい、入んないのか水沢。」
「へ、」
突然名字で呼ばれたりなんかしちゃって、固まるあたし。
「お前さっき、ドアノブに手かけたり外したりしてたろ。入るつもりじゃなかったのか?俺を落とすために。」
「な…。」
「ふーん、やっぱ図星か。」
「い、言われなくても入ります!」
そう言って、あたしはツカツカと生物室に入りドアを閉めた。