短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
ドアを閉めると、部屋は静かになり一層水の音が響いた。
目をつぶると、静かな部屋に木霊する水の音。
静かな教室より、結構好きかも。
「寝るなら出てけ、水沢。」
目をつぶるあたしに、幸正からのキツい一言。
「ね、寝てないし!ただ水の音を聞いてただけですよーだ!」
「水の音?」
「ほら、するでしょ?…これ超綺麗じゃん。」
すると幸正は少し上を向いて、目をつぶった。
「あぁ、今まで気がつかなかったな、そんな音。」
そう言って幸正は水槽にまた目を向けた。
「なんか、生きてる気がするんだよね。静かな学校ってさ。なんか自由な気がして、自分の悩みなんて、ちっぽけに感じる。」
「…。」
「野々村先輩?」
幸正からの返事がなくて、あたしは首を傾げ声をかけた。
「お前って、そんな感情もあるのな。」
「え?」
「てっきり単細胞かと思った。」