短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
「た、単細胞!、止めてよ、あたしはちゃんと多細胞です。」
「知ってるよ、ただなんか意外だっただけ。」
────…。
そう言って振り返った幸正は、少しだけ笑っていた。
「の、…野々村先輩が、笑った。」
呆然としたまま、呟いたあたし。
「は?俺だって笑うよ?何言ってんの。」
キラキラした笑顔のまま、幸正は言う。
水槽なんか見ずに、あたしの顔を、見つめたまま…。
"キュンッ"
え、
突然胸が押しつぶされるような感覚になり、あたしは胸を抑え固まった。
「ど、どうした。水沢。」
あたしの不思議な行動に驚き、幸正が声をかける。
「分かりません!」
何だ、このフニャフニャーっていう感覚。