短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
「あたし、別れて良かったと思う。」
親友のサナエに昨日のことを話すと、そう返事が帰ってきた。
「てか、マコもそろそろ本気の恋しな?、ね?」
「やだ。」
駄々っ子か反論するような、そんな返事をしたあたし。
「じゃあさ、マコはなんで好きでもない人と付き合うのよ。」
放課後のグランドをぼんやり眺めながら、そう呟くサナエ。
「知らない。」
またあたしは、暗い返答をした。
「本気の恋は楽しいよ、なんかワクワクするしさ。片思いも悪口ないよ、うん。」
「片思いなんて、辛いだけだよそんなの。」
「そんな事ないよ。たくさん片思いして、やっと実ったときって幸せだよ?」
「ごめん、分かんないや。」
片思い、両思い。
どれもあたしには、無駄な単語にしか聞こえない。
いいじゃん、自分の満足するように人と付き合ったってさ。
自分の人生なんだし、自由じゃない。
「あ、サッカー部終わったみたい。じゃあね、マコ。」
サナエが鞄を肩に掛け、歩き出す。
「あ、ばいばい。」
「マコ。本気の恋、だよ?」
教室の出入り口の前で立ち止まり、そう言うサナエ。
「無理だっつーの!」
あたしがサナエに向かってそう叫ぶと、ニコニコ笑ってサナエを教室を出て行った。
本気の恋なんて、無理だよ。