短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
「おっはよ、マコ。」
朝、昇降口で上履きに履き替えていると、後ろからサナエに声をかけられた。
「んで?どうだったのよ。」
サナエは下駄箱から上履きを取り出すと、外履きを手を使わずに抜き出した。
上履きも、外履きも、踵が踏まれている。
「あー、会ったよ?」
「どこで。」
「ファミレス。」
「あー、駅前のね?」
「そそ。」
教室までの道のりをダラダラ歩きながら、あたしたちは交互に話した。
「てっきりラブホで会うかと思った。」
「は、なんで!?」
「なんでって、今までの彼氏とは、いつも会うときはラブホが定番だったじゃん。」
「や、やめてよね。幸正はあくまでも、ただの先輩なんだから!」
「あー、フラれたんだっけ?」
「思いっ切りね。」
教室に入ると、あたしたちは鞄を机の上に乱暴に置き、廊下に出るとまた話し出した。
「本気なの?マコは。」
「幸正のこと…?」
「他に誰がいんのよ。」
「うん…。」
「……。」
「最近気づいたんだけど…、あたし…本気みたい。」
「マジで!?」
「ちょ、サナエ…、シー!」
「あ、ごめん。でも…本気なんだね?」
「う、うん。」
「んじゃあ頑張りな!あたし応援してるからさ。」