短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
「失礼しました。」
暗い声でそう呟くと、あたしは職員室をあとにした。
反論したかったけど、あたしの成績が悪いのは事実だし。何も言えなかった。
「お、単細胞。」
ちょうど職員室を出ると、幸正が居た。
なんで今出てくるのよ。
「生物室出入り禁止なんだってな。」
「…ふん、いいもん別に。」
ワザと強がるあたし。
本当は泣きたいくらい、嫌なんだけど。
「あっそ。ならいいじゃん、お互いに楽で。」
お互いに?
「野々村先輩…、もうあたしと居て苦痛だったの?」
「何言ってんの。」
「だって、お互い楽になるって…。」
「お前だって、いいんだろう別に。なら俺だって、別に会えなくてもいい。」
「先輩…。」
「しっかり勉強しろよな。成績、悪いんだろう?」
本当に…言ってる?
一緒に居た数ヶ月間、楽しかったのはあたしだけ。
幸正は苦痛だった?
「じゃあな、単細胞。」
そう言って去っていった幸正。
その、じゃあな。は永遠な気がした。
「単細胞なんかじゃ…ないよ。」