短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
場所は校舎裏の、花壇の前。
着くと、まだ白衣の人がいた。
何、してんだ?
ただポケットに手を突っ込んだまま、じっと花壇を見下ろしている。
なんか、変な奴(笑)
あたしはゆっくり、ゆっくりと、彼に近寄っていった。
「ストップ。」
突然そう叫ばれ、あたしはビクついた。
「そこ、アリが歩く通路だから。靴で踏まないで。」
そう言われ、あたしは足元を見た。
通路なんて、ないのに。
「アリは、アリにしか分からない液を地面につけて、通路を作る。その上をまた他のアリが進む。…アリの行列、見たことあるだろ?」
そう説明され、あたしは顔をあげた。
「うそ…。」
そして、思わず出た言葉。
だってその白衣の男性は、驚くほど格好良くて…。
うそ、の先は何も言えなかった。
「本当だから。」
白衣の男性は、そんなあたしの気持ちも知らずに返答する。
「な、名前!教えて?あと学年!」
速まる鼓動を抑えながら、必死であたしは聞いた。
「野々村 幸正(ゆきまさ)、三年だけど。」
それが幸正との、出会い。