短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
走り去ろうとした、水沢のカーディガンを掴んで、俺は叫んだ。
"水沢"と呼ばれた水沢は、驚きを隠せないようで、大きな目をますます広げた。
「今…水沢って…。」
「水沢。」
俺は水沢のカーディガンから手を離し、言った。
「返事してやるよ。」
「は?」
水沢はまだ理解できないようで、?マークを頭に浮かべる。
「俺も好きだよ。お前の事。」
そう言って、俺は水沢の頭をポンッと叩いた。
「それ、本当?」
「うん、マジ。」
それを聞くと、水沢は顔が明るくなった。
「野々村先輩!」
「何だよ。」
「大好きです!!」
俺を見上げた水沢の目が、赤く染まって、目尻からは涙がこぼれていた。
そんな水沢を見て、愛しく思った俺が言い放った言葉。
「ばーか。」
─END─