短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
「あ、その人知ってるよ。生物部の主っしょ?」
昨日の出来事を話すと、サナエはそう言った。
「生物部の主?なにそれ。」
「知らないの?一年の頃からずっと生物部で、授業の時以外はいつも生物室にいるってゆー。最近は休憩時間も、生物室にいるみたいだよ?」
「オタクかよ。」
思わず出た、本音。
「それがね、あの美形でしょ?…案外モテるみたいだよ。ただ性格が難点みたい。」
確かにイケメンだったけど…生物部って聞くとなぁー。
「まぁ、様子見してみる。」
「何、狙ってんの?」
ニヤつきながら、サナエがあたしに聞く。
「そりゃあ、イケメンって聞いたら引き下がれないよ!絶対に手に入れるんだからね。」
すると、サナエは突然曇った顔をして頬杖をついた。
「どーだろうな、さすがのマコも幸正くんは無理な気がするよ。」
「な、絶対に入れるんだから!」
そうあたしが張り切っている教室の遥か遠くの校舎では、幸正が今日も、生物室にいた。