短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜


「あ、その人知ってるよ。生物部の主っしょ?」




昨日の出来事を話すと、サナエはそう言った。




「生物部の主?なにそれ。」




「知らないの?一年の頃からずっと生物部で、授業の時以外はいつも生物室にいるってゆー。最近は休憩時間も、生物室にいるみたいだよ?」




「オタクかよ。」



思わず出た、本音。




「それがね、あの美形でしょ?…案外モテるみたいだよ。ただ性格が難点みたい。」




確かにイケメンだったけど…生物部って聞くとなぁー。



「まぁ、様子見してみる。」



「何、狙ってんの?」



ニヤつきながら、サナエがあたしに聞く。



「そりゃあ、イケメンって聞いたら引き下がれないよ!絶対に手に入れるんだからね。」




すると、サナエは突然曇った顔をして頬杖をついた。



「どーだろうな、さすがのマコも幸正くんは無理な気がするよ。」


「な、絶対に入れるんだから!」







そうあたしが張り切っている教室の遥か遠くの校舎では、幸正が今日も、生物室にいた。
< 8 / 77 >

この作品をシェア

pagetop