愛しのエリー【ホラー短編】
ヨン
あ、まただ。
朝、下駄箱で上履きに履き替えて、そこで会った友達と教室に向かう途中、
千堂 紗希(せんどう さき)は思った。
教室は3階にあり、2階から3階に上がる階段で、いつも思う。
ひんやりする、と。
階段部分が日陰になっているとはいえ、踊り場には窓があって、そこから日差しは入る。
廊下の窓からの日差しも、時間帯によっては階段まで届く。
なにより、今は7月。
夏休みまであと一週間を切った真夏だ。
梅雨はとうに明け、35度を超す蒸し暑い日が続いている。
それなのに、
冷房のない校舎内、1階から2階へとと汗をかきながら階段を上り、
2階に着くと、急に暑さがなくなる。
汗が引く。