愛しのエリー【ホラー短編】
「幽霊、でませんでしたか?」
のんきに笑いながら聞いてくる男を見ていると、現実に帰ってきたんだと実感がわいた。
幽霊なんて現れないことがあたり前の世界。
「あ、あの…この前幽霊を見たっていう警備員はどうなったんですか?」
香奈枝がカバンを握りしめながら、警備員に聞いた。
男は、校門を開けながら、「もう噂になってるんですね」と笑った。
「特に、どうもなってないんですけどね。
本人、幽霊から逃げてきたと言い張って、その日のうちに辞めてしまったんですよ」
「逃げて…」
悠二はつぶやいた。
「退職は1カ月前に申し出ると決まってるのに、今どきの若いヤツはダメですね」
「で、でも、それは幽霊を見てしまったから――」
紗希は辞めた男を庇うように言った。