恋する夏は微炭酸。 -2010年夏休み短編-
「きゃっ!!!」
私は鉄平の胸とドンと押して、部室を飛び出してしまった。
「おい。待てって!」
鉄平の声が聞こえたけど、そのまま荷物も持たずに校門まで走った。
どうしよう。
戻った方がいいかな。
冷静になって考えてみると逃げるほどのことじゃなかった。
嬉しかったはずなのに。
だって、好きな人に抱きしめられたんだよ?
なのに、どうして逃げちゃったんだろう。
怖かったんだ。
私はまだまだ子供で。
鉄平は大人で。
自分が子供なんだってことを、知られちゃうようで、怖かった。
鉄平がどんな気持ちで抱きしめてくれたのかわからないけど、ただ励ましたかっただけかもしれないのに。
がんばれよって意味だったのかもしれないのに。
逃げちゃったよ。