【花集】水たまりに映る花火
水たまりに映る花火
「みずたまりって可愛いね」


初めて彼が私に発した言葉だ。


彼は私の左胸についている名札を見ながら、優しい笑顔を浮かべて、そう言ったんだ。


「ありがとうございます、またお越し下さいませ!」


私はとても恥ずかしくて、マニュアル通りの言葉しか出せなかった。

だけど、こんなにも『また来て欲しい』って思った人は彼だけだった。




彼はいつも夜9時頃やってきて、ハーフパンツにTシャツ、汗でしっとりと濡れた髪の毛で、決まって同じスポーツドリンクを買う。



だから嬉しかったんだ。




あなたか同じ大学だって知ったときは。




「あれ?みずたまりさんじゃん?」


「あ・・・・・・!」



< 1 / 21 >

この作品をシェア

pagetop