【短編】生チョコ
「もう昼休み終わっちゃうわね。」

私の言葉に反応したのか、沙理奈が伝票をそっと持ち上げた。

「いつも付き合ってもらってるんで。」

そう言いながら、まかせてくださいというジェスチャーをした。

「旅行楽しみですね。」

私は財布の中身まで覗き込まれた気がして、思わず伝票を奪い取っていた。

まさか奪われるとは思わなかったのだろう。

驚いたような、怯えるような、でもどうしていいか分からないような目で私を見つめている。

私の中の何かが音もなく崩れようとしていた。
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