帰って来たお母さん
浴室内で
 だが…


 その時は、不意に訪れた。


 お母さんと些細な口喧嘩をした夕食の後だった。


 先に風呂を済ませた私は自室でパソコンやっていた。


 お父さんは茶の間でテレビを観ている。


 お母さんの方はテレビで大好きな人気時代劇を見終わって、今は入浴中だった。


 すると…


 オェェェーッ!!


「え?」


 お母さんの、うめき声のような声が耳に飛び込んで来た。


 お母さんって時々、妙な声を発する癖があるから…


 又、その類いかと私は思った。


 ところが実際には既に深刻な事態が始まっていたのだ。


「オーイ! 里枝子ッ! 里枝子ッ!」


 隣の風呂場辺りから、お父さんの私を呼ぶ声がして来る!


 私は急いで風呂場に向かった。


「お母さんッ!?」


 風呂場での悲惨な光景を目の当たりにして、私は思わず声を上げる。


 お母さん、浴槽の湯に浸かったまま仰向けでグッタリとなっていた。


 顔中血だらけで、意識が全くないようだ。

「里枝子、手伝え! お母さんを引き上げて寝かせるんだ!」


 お父さんが青ざめた表情で私に指示する。

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