ジャクソンとマイケル
 まっ、オイラはこのままサクラにくっついてサクラの家まで行ってもいいんだもんな。それほど焦ることもない。少しずつでも近づくことができるからな。

 ほら見ろ! オイラの愛の力でもう数ミリ移動に成功だ! このままの調子で行けばおそらく、数日中には……。

 ん? サクラが、眉間に皺を寄せている。何か悩みでもあるのだろうか? だったら、オイラが人間に戻っていくらでも聞いてやるからな。待ってろよ、もうすぐだ。もうすぐつくからな!

 ん? なんか様子がおかしいぞ。今度は、少し上を向くと目をつぶって小さく口を開いてる。その数秒後――

「ぶへっくしょん!!」

 レディにはあるまじきくしゃみが、あろうことかオイラがいる方向めがけて放たれた。いくら不意打ちを食らったからといって、女子のくしゃみぐらいで揺らぐオイラではなかったが、サクラのそれは桁が違った。

 何ともすさまじい殺傷能力を秘めた最終兵器に、オイラの身体はあえなく空中を漂うことになった。

そして、幸か不幸か壁際でノックアウトされているマイケルの耳元――つまりは、オイラの定位置に着地した。

 ここからサクラのいる場所まではオイラにとっては月まで行くような遠さだ。それでも、諦めきれずに一歩踏み出そうかと思ったところで、ユータが戻ってきた。

「おまたせ、サク――マイケル!?」

 にこやかなユータの顔が一瞬で蒼白な色に変わる。
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