ジャクソンとマイケル
 そりゃそうだよな。さっきまでサクラに愛想を振りまいていたヤツがいまや腹を天井に向けてひっくり返ってるんだものな。

しかも、口からはだらしなく舌までたらしていやがる。まったくもってだらしのないヤツだ。

 でも、ユータにしてみれば兄弟も同然の愛犬だ。何が起こったのかわからずあたふたしている。

「マイケル!」

 マイケルの側に膝をついてゆさゆさと揺らしているが、今のところ反応はない。どうやら、結構強く頭を打ち付けたみたいだな。

それにしても、この状況じゃサクラを口説くどころじゃない。そういえば、そのサクラはといえば――

「ユータ君、ごめんなさい」

 しおらしいサクラの声が聞こえる。謝罪の言葉とは、今回はそれなりにやりすぎたとでも思っているのだろうか?

 ユータは、疑問符が頭の上に出ているような顔でサクラのほうを振り返った。

「マイケルね、どうもはしゃぎすぎてたみたいで、部屋の中を勢いよく走り回ってて最終的に壁に頭をぶつけちゃったの。止めようと思ったんだけど、あまりにも勢いありすぎてどうすることも出来なくて……」

 うっすらと瞳に涙まで浮かべている。美女に涙。まさに、鬼に金棒。
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