ジャクソンとマイケル
 気づけばとんでもない街中に出てきている。大きな通りを車が容赦なくビュンビュン走っていく。

人間の数も何か祭りでもあるのか? というぐらいの混みよう。今まで、ユータの家の周辺しか出歩いたことのないオイラたちにとっては、まったく未知の領域だった。

 さて、どうしたものか……。マイケルじゃなくとも、こんなに人間が溢れているところだったらサクラの匂いなどわかるわけがない。

ここはひとまず家に戻ったほうが得策だろう。

「おい、マイケル。一度家に戻ろう」

 オイラの言葉が聞こえてなかったわけではないだろう。その証拠に、なぜかすすり泣くような声が聞こえる。

「マイケル?」

「お家がわかんないワン」

 マイケルの情けない声がオイラに訴えかける。そんなこと言われても、オイラとしてもどうすることもできない。

動物の帰巣本能もコンクリートジャングルでは効かないって事なのか?

 いよいよ困った。ここはマイケルに動いてもらうしか現状を打破することができない。だけど、そのマイケルが自信喪失中。さてさて、どうしたものか……。

 ピクンとマイケルの顔が何の前触れもなく上がった。それまで、しょんぼりと項垂れていたのにだ。

まるで好物でも見つけたような素早さで鼻をヒクヒクさせながら、辺りをキョロキョロ。

先ほどまでの落ち込みようが嘘のように、どこかウキウキした感じが漂ってくる。

「マイケル、どうしたんだ?」
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