ジャクソンとマイケル
 まともにサクラのことを見られないユータは、マイケルの耳辺り――つまりはオイラがいる周辺に視線を漂わせながらサクラに誘いをかけている。

「いいの?」

 殊勝なサクラの言葉。でも、顔は小悪魔だな。ユータが、自分のほうを見られないのを知っててのその表情。

がっつりと見られるオイラとしてはクラクラするほどの微笑だ。やっぱり、ユータにはもったいないな。

「う、うん。サクラちゃんが迷惑じゃなければなんだけど……」

 どこまで気が弱いんだ、ユータ。サクラが、物足りないと言うのもわかるよな。こんな調子だから、サクラの言うところの既成事実なるものがなかなか作れないんだろう。

 あぁ! でも、今日は危ないぞ! いつもならマキコさんがいるところだが、今日に限ってユータしかいない。もしかして、今までのことはマキコさんの差し金か? 

ユータとサクラが二人きりにならないように……。そう考えれば、今日ユータとサクラが会っていないのも頷ける。

 となると、やっぱりこのまま二人きりにするのは不味すぎる。どうにかして、二人きりになるのを避けねば。

 なんてオイラの心配など杞憂に終わったけどな。だから、ユータはビビリなんだ。いつもは雨の日しか家の中に入れてもらえないはずのマイケル。

今日は、思いっきりいい天気だ。それなのに、なぜかリビングではユータとサクラが向かい合って座る間にマイケルが鎮座している。
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