ジャクソンとマイケル
「今の、一撃にはサクランの愛を感じたワン。もっと、たくさんスキンシップして欲しいワン!」

 もしや、今の衝撃でマゾ気質に目覚めたか? まあ、そんなことはオイラには関係ないことだ。それよりも、とにかくサクラの元へと向かうことが先決だ。

 マイケルは、オイラに言われるまでもなく、しかも、先ほどの蹴りに懲りることもなく再びサクラの足先に鼻を擦り付けてから、その膝の上に前脚を乗せた。

 おっ! ちょうどいい感じにオイラが乗っかるマイケルの耳の付け根がサクラの肩口に来ていた。

 ラッキー! ノミ界でも跳躍力のあまりないオイラたちイヌノミだが、火事場のなんとやらで大ジャンプをかましてやった。

 かろうじてサクラの洋服に絡まる形で着地したが、ここまで来て考えてしまう。本当に、どうやってアピールしてやろうかと……。

 そこで、再びユータが「お茶、入れなおしてくるね」と言いつつ席を立った。

 フムフム。こうなるとマイケルがまた黙ってないはずだよな。とか思っている矢先に、マイケルが再び吹っ飛んだ。

 壁に頭がぶつかるゴンという鈍い音まで響いた。

 こりゃ、完全にノックアウトだな。今日のところは、マイケルは戦線離脱だろう。ということは、後はオイラの独壇場。

 魔法をかけられた王子は、たいていは姫の口づけで魔法がとけるはず。ということで、とりあえずサクラの唇めがけてゴーだ。

 とはいえ、それは容易なことではない。人間なら、手を開いたぐらいの距離なのだろうが、オイラにとっては千里の道にも等しい。
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