タイトル未定
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始業式が先日終わり、二年生になってから一週間程が経った放課後、俺は友人とダラダラと食堂でだべっていた。
放課後のもう遅い時間という事もあってか食堂内は散漫とし、生徒は自分たちの他に数組いる程度だった。ゆっくりと過ごせる為、一年の時から度々こうして場所を借りている。
「春休みが恋しー・・・・・・」
「何度目だよそれ言うの」
ダラーっとテーブルに突っ伏す男の言葉は、今日だけで五回以上も聞いた気がする。
確かにその気持ちはわかるのだが、それにしても言い過ぎだ。ただ単に対応に困る。
友人は僅かに首をもたげ、鈍よりとした瞳でこちらを見つめる。
「なー井口よ。お前一組だっけ?」
「四組だよ」
つい溜息まじりになってしまう。今日だけで何回教えた事かわからないというのに間違える。そもそもこいつが一組だったと思うのだが、どこをどう間違えたのだろうか。
「可愛い子、いたか?」
またこれか。露骨に溜息をつきつつ、それでも答えてやる。
「いるんじゃないのかそりゃ。何人かは」
次のこいつの言葉は予想出来ている。もうそれも今日何度聞いたかわからない程に聞いてやった。
「彼女欲しいなー・・・・・・」
やっぱりだ。
目の前で突っ伏している男は夏目亮平。一年の時に同じクラスだった事から友人をやっていたりするのだが――。
「そろそろ帰るぞ。もう五時過ぎてんじゃねーか」
「えー井口帰んのーなんでー」
「・・・・・・俺は帰るからな」
俺は未練なく席を立つと、昇降口目指して歩き始めた。後ろから夏目が「待ってー置いてかないでー」なんて言っているが、歩きスピードは緩めない。